9月12日(日)NIE新聞活用 読売こども俳句(校長先生より)
- 公開日
- 2021/09/12
- 更新日
- 2021/09/12
校長室
高校生の夏の俳句大会「俳句甲子園」での一押しの作品です。
星空を 歩いて茄子(なす)の 無尽蔵(むじんぞう) (開成高校生徒作品)
「無尽蔵(むじんぞう)」は、数限りないということです。夜に散歩をして、星もいっぱい、ナスもいっぱい畑に実っているのです。身近なナスを、詩にしたことに驚かされました。
2021年9月1日(水)読売新聞朝刊の「こども俳句」を紹介します。
デラウェア つまんで二秒 皮塚へ
(小学校6年生の作品)
※「皮塚」っておもしろい表現ですね。昔の人が貝殻(かいがら)を集めたのが貝塚なら、ブドウの皮を積んでおくのが「皮塚」というわけ。いつかこの川塚も、化石になるのかも!?実を食べるのが「二秒」というのも、小粒のデラウェアらしいところ。
向日葵(ひまわり)が 僕越え 母越え 父越えた
(小学校4年生の作品)
※「父」「母」「僕」の順で背が高いのです。向日葵(ひまわり)がぐんぐん大きくなって、家族全員の背を越えてしまった驚きが「越え」の動詞の3連続で伝わってきます。向日葵(ひまわり)の成長を、早送りの映像で見ているみたいで、迫力満点の1句です。
おおぜいが きてめがまわる 海開き
(小学校5年生の作品)
※海開きは涼(すず)しいイベントですが、あまりたくさんの人が来ると、かえって暑苦しくなりますね。おしあいへしあい、人にもまれる苦しさを「めがまわる」がずばりと表しています。もう一度こんな海開きをしたいと、しみじみ味わいました。
時の日や 目高(メダカ)はみんな 急いでる
(小学校4年生の作品)
※6月10日の「時の記念日」に作者は時間って何だろうと考えてみたのでしょう。「目高(メダカ)はみんな急いでる」は、人間の時間と目高(メダカ)の時間の違いを感じさせる、深いフレーズ。寿命の短い中でも精いっぱい生きている目高(メダカ)、けなげです。
母に「はい」 ラベンダー味の マカロンを
(小学校6生の作品)
※ラベンダーの花を混ぜたマカロンをお母さんにあげたのです。ラベンダーの匂いがして、花の色であるむらさきに染めたマカロンが、とってもおしゃれ。「はい」の軽やかさも良いな。「ありがとう」と返すお母さんの明るい笑顔が見えてきます。
かまきりの 子どものうごき すばやいな
(小学校1年生の作品)
※人間の赤ちゃんは、生まれたばかりは動けないけれど、カマキリの子どもはすぐに走り出します。小さな手足で、なんと素早いこと!カマキリの子どもをよく観察して、命の力を鋭くとらえていますね。
【もっと伝わる直し方】 「へ」と「を」の違い 空間広く
有名な俳人 飯田蛇笏(だこつ)に弟子入りをしようとした中川宋淵(そうえん)。大学卒業の年、富士山で心静かに瞑想(めいそう)をして、俳句を作ります。
その足で蛇笏(だこつ)のもとにやってきた宋淵(そうえん)は、作った俳句を見せるように言われ、
秋晴れや 火口へ落つる 砂の音 (添削前)
という句を示しました。秋晴れの下、火口深くへ、砂がサラサラとこぼれ落ちてゆくという眺めです。すると蛇笏(だこつ)は、「火口へ」ではなく、「火口を」としたほうが良いとアドバイスをします。
秋晴れや 火口を落つる 砂の音 (添削後)
「火口を落つる砂」だと、火口全体が見えてきます。たった一字の違いですが、ぐんと句の切り取る空間が広くなります。達人の、さすがの添削です。
(読売新聞2021年9月1日朝刊より)
俳句で「虫」といえば、カブトムシやトンボではなくキリギリスやコオロギなどの、秋に鳴く虫のことです。「虫かご」は、昆虫採集で使うものではなくて、鳴く虫を入れて声を楽しむものをさします。
中中生のみなさん。夕方になると虫の鳴く声が聞こえるようになりましたね。「虫」という秋の季語を入れて、何か俳句を詠んでみてはどうでしょうか。