2月12日(土)NIE新聞活用 読売こども俳句(校長先生より)
- 公開日
- 2022/02/12
- 更新日
- 2022/02/12
校長室
星野立子という俳人の有名な句に「しんしんと寒さがたのし歩みゆく」があります。寒さが楽しいなんてあるだろうか?と納得がいきませんでした。しかし最近、新しいコートを買って、この句の気分がわかりました。ふかふかのコートだと、寒くても出かけたくなるのですよね。ふんぱつしたかいがあったぞ。(読売新聞の記事より)
2022年2月2日(水)読売新聞朝刊の「こども俳句」を紹介します。
ゆき見れば ふあんなことは 山のおく
(小学校1年生の作品)
※ゆきのしろさが心にもおよび、ふあんな気持ちもいつのまにかなくなってしまうというのでしょう。それをこのように表現でいえるというのは、素晴らしい才能の持ち主。見えない「ふあん」を形あるもののようにあらわして、詩的です。
給食は カボチャのスープ 冬至(とうじ)かな
(小学校3年生の作品)
※栄養豊かなカボチャ。風邪をひかずに冬を乗り越えるために、冬至に食べるとよいとされます。給食にもカボチャのメニューが出ていることを詠んで、新鮮な切り口です。給食を作る人たちの伝統的な文化を伝えたいという思いの反映ですね。
川の音 秋といっしょに 流れゆく
(小学校6年生の作品)
※川の音は一年中聞こえるので、季節感がないようにも思えます。でも、冬には水がかれることもあり、秋に最もしみじみと感じられるもの。秋から冬へと移る季節の実感を、川音に耳を澄ませることでつかみとった、みずみずしい感覚の一句です。
きっぱりと 父の正月 今日終わる
(小学校3年生の作品)
※「きっぱり」という言葉がよく働いています。お父さんの性格まで、この語で想像できるのです。気持ちの切り替えがはやく、仕事ができるお父さんなのでしょう。そんなお父さんを尊敬する息子の気持ちも、この句から確かに伝わります。
大そうじ まどゆかにわと たいへんだ
(小学校4年の作品)
※「まど」「ゆか」「にわ」と三つの言葉が、五七五の七の部分にぎゅっと詰まっていますね。この詰まり方で、大そうじの日の慌ただしさが思われるのです。家中をばたばた、忙しいこと!言葉の使い方が上手な作者に感心しました。
雪だるま 大きく作り だっこした
(小学校6年生の作品)
※まるで だっこするために雪だるまを作ったかのように表現しているのが、面白いですね。この句から、映画「となりのトトロ」でサツキとメイがトトロに抱きつくシーンを思い出しました。きっと作者もあんな表情をしているのでしょうね。
【言葉のテクニック】 体言止めの効果
五七五のきまりにこだわらない俳句を「自由律俳句」と言います。なかでも、尾崎放哉(ほうさい)と種田山頭火(さんとうか)が有名。心のおもむくままに作っているようですが、実際には、表現にはこだわっていました。例えば、「けふは霰(あられ)にたたかれて」「鉄鉢(てつばつ)へ音たてて霰(あられ)」「霰(あられ)、鉢の子の中へも」と数々の試案を経て、
鉄鉢(てつばつ)の 中へも霰(あられ) 山頭火
という代表句が生まれました。お坊さんの修行で人からお米やお金を受け取る器が「鉄鉢(てつばつ)」です。その中に、急に霰(あられ)のつぶが飛び込んできたというのです。
注目したいのは、「霰(あられ)」という名詞で終わる、体言止めのテクニックです。体言(名詞や数詞)で終わると、句が完結したと印象づけられ、安定感が出ます。勢いよく降ってきた霰(あられ)が鉄鉢(てつばつ)の底で止まり、金属音を立てるのが、体言止めだからこそ聞こえてくるのです。
(読売新聞2022年2月2日朝刊より)
中中生のみなさん。体言止めを意識して、何か俳句を詠んでみてはどうでしょうか。