中部中日記

8月18日(水)NIE新聞活用 読売こども俳句(校長先生より)

公開日
2021/08/18
更新日
2021/08/18

校長室

日盛りの街中を歩いていると、ふっと涼しい風が吹くことがありますね。あけっぱなしたお店のドアから、室内の冷気がもれてくるのです。あの現象に名前を付けたいと、ここのところ頭を抱えています。「ラッキー冷気?」「クーラーおすそわけ?」みなさんなら何と呼びますか。まだ名前のないものに、自分で名前を付けるのって、わくわくしますね。

2021年8月4日(水)読売新聞朝刊の「こども俳句」を紹介します。

おれスイカ まっすぐ来たな もう終わり
(小学校3年生の作品)
※スイカ割で割られるスイカに自分を置き換えた発想に、たまげました。棒を持った人間がまっすぐ向かって来るのをみたら「もう終わり」と降参(こうさん)するほかありません。ふとスイカがかわいそうに思えてくるのは、この句が持つ言葉の力ゆえです。

潮干狩り(しおひがり) 魚と貝と 二年ぶり
(小学校5年生の作品)
※「魚と貝と二年ぶり」というところから、作者がふだんは海から離れて暮らしていることが、自然とわかるようにできています。魚や貝をまた見られることを、友達と再会するように表現したのが良いですね。海へのあこがれが伝わります。

晴れの日に アイスクリーム どれにする 
(小学校4年生の作品)
※よく晴れた青空の下に、色とりどりのアイスクリームが並んでいる店先を想像しました。とてもカラフルで、心に残るイメージです。「どれにする」という気持ち、よくわかるなあ。選ぶのに迷い、困ることが、実は楽しいのですよね。

赤トマト 食べた犯人 黒い羽根
(小学校6年生の作品)
※犯人について作者から「黒い羽根」というヒントが出されていて、なぞかけみたい。みんな、わかるかな?そう、答えはカラス!せっかくのトマトを食べて困ったやつですが、こんな愉快な句のネタになったのだから、許してやりましょう。

けんか中 間を通る 紋白蝶(もんしろちょう)
(小学校5生の作品)
※ケンカをしているときは心がカッカしているものですが、そこを通っていく紋白蝶(もんしろちょう)は、ひらひらとかろやか。その対比が良いですね。なんとなく、ケンカをしているのがばかばかしくなります。紋白蝶(もんしろちょう)は、小さな天使なのかも。

夏休み じいじばあばも ニコニコ顔
(小学校3年生の作品)
※夏休みがうれしいのは子どもだけではなく、じいじ・ばあばも同じ。なにしろかわいい孫が会いに来てくれるのですから。ニコニコと出迎えてくれるじいじ・ばあばは、ありがたいですね。この句の通り、笑顔あふれる夏休みとなりますように。

【言葉のテクニック】 色が「闘う」!? 擬人法で迫力 

みなさんが幼かったころ、「おひさま、にこにこしてるね」「たたいたら、いすがかわいそう」といったように、ものにも心があるように話していませんでしたか。これは「擬人法」という言葉のテクニックの一つ。人ではないものを、人のように表現する方法です。

赤と青 闘ってゐる(いる) 夕焼けかな   (波多野 爽波)

夕焼けが鮮やかな西の空は、上のほうは青、下のほうは赤と、くっきり色分けされます。そのことを、赤い色と青い色が闘っていると擬人化したのです。「闘う」の語はふつう人間に使いますが、それを色にあてはめています。まるで大空を舞台にしたレスリングの試合のようで、迫力満点です。
人以外にも心があると思うと、世界のさまざまなものが、いっそう自分に近く感じられますね。

(読売新聞2021年8月4日朝刊より)

中中生のみなさんも「擬人法」というテクニックを使って、何か俳句を詠んでみてはどうでしょか。