中部中日記

6月6日(日)NIE新聞活用 読売新聞 こども俳句(校長先生より)

公開日
2021/06/06
更新日
2021/06/06

校長室

雨の中、ベンチにくっついていたアマガエル。つやつやの緑色は、たしかに芥川龍之介が「青蛙 おのれもペンキ ぬりたてか」と句に詠んだとおりだなあと感心しました。私たちは、言葉を通して世界を見ています。四季折々の名句を覚えておくと、見なれた世界も色あざやかに塗りかえられてみえるでしょう。

2021年6月2日(水)読売新聞朝刊の「こども俳句」を紹介します。

立夏だと 教えてくれる 雲の色
(小学校6年生の作品)
※立夏は夏の始まりという意味で、5月6日ごろにあたります。ヒマワリはまだ咲かず、セミの声も聞こえないけれど、「雲の色」は夏の到来を告げています。きっと、まっしろな雲だったのでしょう。作者の感覚の鋭さを示す一句です。

青空は さくらが散るとこ 見ているよ
(小学校5年生の作品)
※桜のピンク色と空の青さは、よく合いますね。この句を詠んで、空と桜は仲良しだという予想は、確信に変わりました。桜が散っていくときにも、青空は見つめて寄り添っているのです。自然の中でつむがれる物語に感じ入りました。

こいのぼり なんでお空に かざるのだ
(小学校4年生の作品)
※「なんで?」とこいのぼりをかかげるそもそもの由来を知ろうとする姿勢、尊敬します。何よりも、こいのぼりを「お空にかざる」という表現が、みずみずしいですね。物事を根底から問う態度が、こうした新鮮な表現を生むのでしょう。

こいのぼり ぼうそうしてた こどもの日
(小学校5年生の作品)
※「ぼうそう」は漢字で書くと「暴走」。むやみやたらに走ることです。こいのぼりがぼうそうしていたというのは、風が強くて、荒々しくなびいていたということ。ついには空へ飛び出してしまいそうな、迫力のあるこいのぼりを詠んでいます。

つばめのす 今年は上手に 作ってね
(小学校4生の作品)
※私も、出入り口をまちがってふさいでしまった失敗作を、見たことがあります。今年こそは、立派に巣作りしてねと呼びかけるやさしさに、きゅんとしました。人間とつばめとがよく共生しているこの街に、住んでみたいなあ。

予定表 遠足予定 書いてない
(小学校4年生の作品)
※感染症の拡大の影響で、春の遠足がなくなってしまったのでしょう。喪失感を「予定表」という具体的なものを通して表しているところが良かったです。何も書いていない予定表のマスの白さが、雄弁に悲しみを語っています。

【言葉のテクニック】「反復」で心地よいリズム

普段の会話では、同じことを繰り返すのはムダとして避けられますが、歌の歌詞は別。歌では、同じフレーズが何度も出てきますね。これは、リフレイン(反復)という言葉の技法で、繰り返すことで心地よいリズムを作り出すのです。俳句でも、リフレインはしばしば用いられます。
滝落としたり 落としたり 落としたり (清崎敏郎)
 この句では「落としたり」が3回も繰り返されています。流れてきた水を滝が次々に落としているのを、リフレインで表しているのです。いってみれば、滝とは、水のリフレインなのですね。
 動詞が「落ちる」ではなく「落とす」とあることも重要です。能動的に、滝が水を落としているといったことが、力強い語調を生んでいます。

(読売新聞2021年6月2日朝刊より)

中中生のみなさん。リフレイン(反復)という言葉の技法を使って、俳句を詠んでみてはどうでしょか。