4月25日(日)NIE新聞活用 読売新聞 こども俳句(校長先生より)
- 公開日
- 2021/04/25
- 更新日
- 2021/04/25
校長室
俳人・高浜虚子(たかはま・きょし)は、「俳句は極楽の文学だ」と言いました。俳句を作ったり読んだりすると、幸せな気持ちになるということ。もちろん、元気な句ばかりではなく、悲しい句やさびしい句もあるのですが、不思議とほのかな明るさをたたえているのです。
2021年4月21日(水)読売新聞朝刊の「こども俳句」を紹介します。
一つだけ 咲くのがおそい チューリップ
(小学校3年生の作品)
※ならんでいる中で、ひとつだけまだ、ひらかないチューリップがあるのです。「どうしたのかな」と心配する気持ちや、「がんばって早く咲いてね」と応援する気持ちが、はっきりと書いていないのに、ちゃんと伝わってきますね。
おひな様 地震のせいで 鼻欠ける
(小学校6年生の作品)
※陶器でできたおひな様なのでしょう。地震で倒れてしまい、鼻が取れてしまったのです。おひな様の端正な顔立ちの、すっととおった鼻筋をそこなってしまったのはなんとも惜しいこと。さびしい眺めだけれど、魅力的な一句です。
菜の花は あかるくてらす お母さん
(小学校5年生の作品)
※家の中を明るくしてくれるすてきなお母さんを、菜の花にたとえたのです。菜の花のすこやかな黄色が思い浮かぶことで、お母さんがどんな人か、しらない人にも想像できるように作られているのが素晴らしいです。
葉桜の 下でおもいっきり こけちゃった
(小学校4年生の作品)
※「こけちゃった」といっているわりには、ネガティブな印象はぜんぜんありません。葉桜の下でなら、ころんでもかまわないとすら思わせるところが、この句の面白さ。初夏を告げる季語の「葉桜」が、景色のすべてを輝かせているのです。
給食を 毎日おかわり 進級す
(小学校6生の作品)
※進級への思いを俳句に込めてくれました。この句は「毎日」というところに成長期のパワーを感じて圧倒されました。中学に向け、もりもり食べて、ぐんぐん育っていくのでしょうね。頼もしい!
桜の木 根まで太いな はみ出てる
(小学校4年生の作品)
※幹がふとぶととして、立派な桜。人があまりかえりみることのない、その根っこまで見ているのが、創作者の態度として立派です。地面からはみ出た根の太さをいうことで、その桜の大きさや、花のひろがりまでイメージさせます。
【言葉のテクニック】 動詞削り言いたいこと絞る
俳句の動詞は、一つの句に一つが理想的と言われます。「シート引き 弁当並べ 桜見る」などと、動詞が多いと、説明的になるのです。動詞を削って、言いたいことを絞りましょう。
少ない動詞を、どれほどうまく使えるか。俳句作りのセンスが問われます。次にあげるのは、お手本の句です。
チューリップ花びら外れかけてをり 波多野爽波(はたの そうは)
チューリップ花がおとろえると、花びらが少しずつ散ります。それを、「外れる」という動詞を使って表したのです。「散る」「落ちる」「取れる」と、似た意味の他の動詞だと、平凡になってしまいます。「外れる」の動詞は、「部品が外れる」などと硬いものについて使うので、花の終わりの、命の薄れた感じをよく再現しています。
(読売新聞2021年4月21日朝刊より)
中中生のみなさん。少しでも幸せな気持ちになれるように、俳句を作ったり読んだりしてみてはどうでしょうか。