4月18日(日)NIE新聞活用 読売新聞 こども俳句(校長先生より)
- 公開日
- 2021/04/18
- 更新日
- 2021/04/18
校長室
何かを始めるのにぴったりの4月です。みなさん、ぜひ俳句にチャレンジしてみましょう。ルールは2つだけ。五七五のリズムでつくること。季語は身近にあります。たとえば花壇の「チューリップ」や「菜の花」だって季語です。そこを飛ぶ「チョウ」も季語です。花壇は俳句の材料の宝庫なんです。
2021年4月7日(水)読売新聞朝刊の「こども俳句」を紹介します。
おじいちゃん うぐいすの歌に 点つける
(小学校4年生の作品)
※「うーん、まだ60点!」などと言っているおじいちゃんを思い浮かべると愉快です。うぐいすは、春先は「ホーホケキョ」の鳴き声がちょっと下手で、だんだんうまくなります。おじいちゃんはきっと、その上達が楽しみなのでしょう。
春の風 せんたくものの かわく音
(小学校4年生の作品)
※ただ、春風で洗濯物がかわくと言っただけではありません。その「音」を聞きとめた鋭い感性に驚きました。読んだ人の耳に、服やシーツがはためくときの音が聞こえ、春のすがすがしさが感じられるように作られています。
ザアザアと ぼく呼び寄せる 春の滝
(小学校5年生の作品)
※春の滝の水音を詠んだのは、いい切り口です。雪解けの春、滝の水も冬に比べて豊かになり、水音も高らかに響くようになります。その水音をたよりに進んだことを、滝の方が自分を招いているようだといったひねりも、あざやかでした。
ごあいさつ ねぐせいっぱい 春の朝
(小学校3年生の作品)
※ねぐせは見栄えのよくないものですが、この句の「ねぐせいっぱい」はかわいらしいですね。「春の朝」という季語を、末尾に置いたおかげです。すべてがみずみずしい春の朝、たくさんのねぐせもまるで木の芽のようにかれんに見えるのです。
ゆきだるま とけないように つくりたい
(小学校3年生の作品)
※どれだけかたくつくっても、雪だるまはどうしてもいつかはとけてしまうもの。だからこそ、「とけないように」と言っているのが、じんと胸にきました。ゆきだるまと、少しでも長くいっしょにいたい気持ちが伝わります。
さくらの木 少しずつさく ゆっくりと
(小学校3年生の作品)
※桜の木のことしか言っていないのに、それを見ている人間の感情まであらわしているところが、すばらしいですね。満開の時を、今か今かと待ち望んでいるのでしょう。そうした気持ちであおぐと、いっそうゆっくり感じるものです。
【名句に学ぼう】 言葉の先入観を洗い流す
俳句にとって何よりも大切なのは、先入観にとらわれない、まっさらな心です。その点、大人よりも子どものほうが俳句に向いているといえます。
たとえばカエルは、和歌においては、良い声でなくカジカガエルしか注目されませんでした。江戸時代の松尾芭蕉(まつお ばしょう)が「古池や 蛙(かわず)飛び込む 水の音」と詠んで、カエルは声だけではなく姿や動きもユーモラスで面白いことを発見したのです。
芭蕉を尊敬する蕪村(ぶそん)という人は、
飛込(とびこん)で 古歌洗ふ 蛙かな
と、この句をパロディーしました。芭蕉は、カエルという言葉にまつわる先入観をまるで荒い流すかのように取り払い、新しい作品を作ったというのです。俳句を詠むことは、言葉を洗って、ピカピカにするということなのですね。
(読売新聞2021年4月7日朝刊より)
中中生のみなさん。先入観にとらわれずに、身近にある季語を使って俳句を詠んでみてはどうでしょう。