中部中日記

2月22日(日) 心の声を聴く【少年の主張愛知県大会より】

公開日
2026/02/22
更新日
2026/02/01

校長室

中学校に「夢と希望と」をテーマにした「令和7年度少年の主張愛知県大会」の発表文集が届きました。みなさんと同じ世代の子たちが今伝えたいことをぜひ読んでほしい!感じたことを友だちや学校の先生、家族に話してみてほしい!そんな願いからHP記事で少しずつ紹介していきます。今回紹介するのは、田原市立東部中学校3年の生徒の作品です。




題: 心の声を聴く

「聞こえない。」

それだけで人間関係が変わるかもしれない。それだけで、学校の授業で、周りのみんながしていることができなくなるかもしれない。将来、仕事ができなくなるかもしれない。そんな不安を背負って生きている人たちがいる。


僕には、遺伝性の耳の病気がある。完全に聞こえなくなるわけではないが、手術をしないと空気が詰まった感じになるらしい。小学校のときはあまり気にしていなかったが、中学校生活が始まると不安を感じるようになった。友達との会話や、先生の話が少し聞こえにくい。小さい声だと何も聞こえなくなった。周りの人たちからは、ただ耳が悪いだけと思われているが、本当は、みんなが思っているより、もっとずっと聞こえにくい。


聞こえにくいな。このままどんどん聞こえなくなるのかな。そうしたら、授業はどうなるのかな。人間関係はどうなるのかな。漠然とした不安が僕を襲う。


先生の言葉や友達との会話が聞き取りにくいとき、聞き返すこともある。でも、必要な情報を聞き漏らしたりすることもある。周りの人たちからは、耳が悪いことは理解してもらっている。けれど、僕がどれくらい聞こえていないのか、わかりにくいと思う。それに、聞き返すことが申し訳ないという気持ちは、聞こえることが当たり前のみんなにはわからないだろう。正直、聞き返すのも面倒で、うやむやにすることだってある。滞りなく会話ができている友達がうらやましい。


もっと聞こえなくなったらと不安になっていたとき、母が

「つらいことがあったとき、それを逆手にとっていけたら、それはあなたの武器になるし、強さになる。」

と言ってくれた。その言葉を聞いて、僕は、難聴の方に寄り添えることを僕の強みに変えていこうと思った。


この世には、生まれつきほとんど耳が聞こえない人がたくさんいる。以前、テレビで、難聴の赤ちゃんに補聴器をつけた瞬間、満面の笑みがこぼれたシーンを見た。その赤ちゃんの笑顔を見て、僕は、難聴の方の力になれる仕事がしたいと強く思った。


調べてみると、言語聴覚士という職業があることを知った。「話す」「聞く」というコミュニケーションと「食べる」という摂食の機能に問題がある人に対し、検査、評価、指導、助言などのサービスを提供する専門職だ。その中でも、僕は、「聞く」という聴覚分野の仕事をしたい。聴覚分野で担う役割は、主に聴覚障害のある方々をサポートすることだ。例えば、聴覚検査や補聴器の選定、調整、聴覚訓練などを行い、コミュニケーション能力の回復や維持を目指していく。また、難聴の早期発見や、高齢者の補聴器リハビリなど、広い年齢層の方々をサポートする。


僕の祖母も耳が悪かった。話しかけても返事がなかったり、聞き返したりしてきた。だから、僕はだんだん話しかけるのをやめてしまった。今になって思う。きっと祖母に寂しい思いをさせてしまった。後悔している。もっと聞こえやすいように話せばよかった。話しかけて笑顔が見たかったのに、祖母はもういない。


人は、コミュニケーションありきの生きものだ。円滑なコミュニケーションによって生きる活力を見出していると言っても過言ではない。話したり聞いたりすることは、とても大切だ。


「わかってほしい。」

障がいのある人だけではない。誰もがそう思っている。けれど、周りから簡単に理解されるわけではない。


僕は、言語聴覚士になる。障がいのある人と健常な人との壁をなくしたい。そして、体の機能が低下した人だけでなく、僕の周りのすべての人を助けられるような人になりたい。今より耳が悪くなったら、僕は補聴器をつけようと思っている。それから、手話も学びたい。耳が悪くて経験していくことを、これからの自分の将来の強みとして、同じ思いをする方々の支えになりたい。


僕は、耳の聞こえは悪いけど、人に寄り添い「心の声を聴く」言語聴覚士になりたい。


(HP掲載について、編集・発行先より許可をいただいています)