学校日記 「きらわく」

3/18 第75回卒業式〜式辞

公開日
2022/03/18
更新日
2022/03/18

校長室

(前半省略)

 先日引退したばかりの「体操界のキング」と呼ばれた内村航平選手は、世界選手権六連覇、全日本選手権十連覇など、国内外を合わせて個人総合四十連勝の超人的な記録を持ち、オリンピック四大会に出場し、個人総合に連覇を含む七つのメダルを獲得しました。

 そんな内村選手でも、以前は練習嫌いだったといいます。十代後半の頃、大学生の世界大会代表合宿で、メキシコとミュンヘン二つのオリンピックで金メダㇽの加藤沢男さんから「世界一になれるのは世界一練習している選手だ」と告げられました。さらに、アテネオリンピック団体金メダルの富田洋之選手が、年下である自分よりも熱心に練習している姿を目の当たりにしたのです。
 それ以後、練習嫌いだった内村選手は、努力することを怠ることなく、黙々と練習する姿に変わったのです。周囲に世界一の質と量と言わしめる猛練習を積み重ねました。特に、各種目の倒立、あん馬の旋回などの基本練習を重視し、努力し続けました。こうして完成度が高く、つま先までピンと伸びた演技を生み出しました。

 内村選手は、昨年夏の東京オリンピックで、鉄棒の演技途中で落下をしてしまい、最後は予選落ちという残念な結果に終わってしまいましたが、神業と言われ舞い降りるような着地など「正確で美しい体操」は本人が求め続けた極地でしょう。
 「ウチムラ」と命名された技はありません。それは、誰にもまねできない技さばきを求めつづけたからです。回転不足や足の乱れがない床のひねり技、まっすぐな体の線が表現されている平行棒の倒立、いずれも「これぞ内村」と称されます。まさに、「努力が天才をつくる」を絵に描いたような選手と言えるでしょう。
 
 同じように、プロ野球の読売ジャイアンツやメジャーリーグで活躍した松井秀喜さんは、二十年間のプロ生活で輝かしい成績を残しました。
 現役時代、松井さんは厳しいトレーニングを自らに課し続けました。その理由として、「神様は頑張った人や苦しんだ人に、最後は微笑んでくれる。神様は楽をしている人、楽をしていい結果を残そうとしている人、投げやりになっている人には、最終的には微笑まないと思う」という考え方を持っていたからだとされています。

 毎年良い成績を残すために、努力を欠かさないことの大切さを二人は教えてくれています。築きあげた成果は、継続した努力によるものといえるでしょう。
 二人の輝かしい実績は、目に見える成果ですが、その裏には目に見えない苦労や努力があることを忘れてはいけません。水面を優雅に泳ぐ水鳥は、水面下で必死に足を動かし続けているといわれます。水面に浮かぶ氷山は、水面下に大部分が隠れた巨大な氷の塊の一角にすぎません。

 努力は裏切らないといいますが、努力は裏切ることも、また多いのです。努力をいくら積み重ねても結果が出ないことの方が多いことを、皆さんも知っているかもしれません。
 ただ言えることは、くじは引かないと当たらないように、努力を辞めたら間違いなく成長は止まります。もちろん、結果が出ることもありません。
 しかし、たとえ結果が出なくても、努力し続けることをやめてはいけません。ただし、努力をし続けたからと言って、やみくもに結果を期待してもいけません。結果を期待するのではなく、努力そのものに意味を見出して、日々成長することに期待するのです。

(最後省略)