子どもがウソをつくとき
- 公開日
- 2012/12/18
- 更新日
- 2012/12/18
校長室便り
子どもがウソをつくとき
「先生、うちの子、ウソばっかりつくのでどうしたらいいの?」校長室にいたら、A君のお母さんが相談に尋ねてきました。
話は、親の財布からお金を持っていこうとする子どもを叱って、問いただしたら、友達にお金を持って来いと脅されている、と訴えたので、お母さんは、すぐに「脅して金をよこせというのは、どういうことだ」、と相手の家に乗り込んだそうです。しかし、話をよくよく聞いていくと、事実は全く違っていて、自分の子が、その子にお金を借りていて、返そうとしていたことがわかり、乗りこんでいった自分がとっても恥ずかしかった。いつもウソをつかないように厳しく叱っているのに、ウソをつく。どうしたらいいのかわからない。という相談でした。
「それは、困った話だね。」
「もう、許せないんです。いくら叱っても、すぐにばれるウソを平気でつくんです。」
話が一段落したところで、お母さんに尋ねてみました。
「お母さんが、友達と話に夢中になって帰宅が遅くなり、ご主人から『何で遅くなったんだ。』と、尋ねられたらどうやって答えるの?」
「そりゃ『仕事で遅くなった。』って答えるわ。」
「ふーん、・・・・・どうしてお母さんは、話に夢中で遅くなったと正直に言わないの?」
「正直に言えないわ。ごちゃごちゃ言われるの好きじゃないし・・・」
「ご主人に嫌われたくないものね・・・。」
「そうよ。嫌われたくないの。」と、つぶやきながらお母さんの顔が、変わっていきました。
子どもは、お母さんやお父さんに無条件に愛されたいと思っています。自分が大好きなお母さんやお父さんに嫌われたらどうしようと考えています。何か事が起きて、その大好きな人から「なぜなんだ」「どうしてだ」と強い口調で尋ねられたら、本能的に自分を守ろうとして本当のことが言えなくなってしまいます。自分が先に手を出していても「僕は何もしていないのに。・・・」「僕は本当はやりたくなかったんだけど、○○君が『やれっ』て、言ったから。」本当のことを伝えるには、客観的に物事を見る目も必要ですが、何よりも本当のことを言っても受け入れてもらえるという安心感が親子の中に必要でしょう。
きっと、A君は、途中で自分が言ったことで問題がさらに大きくなり、さらに、興奮する両親を前に引っ込みがつかなくなって、ウソの上塗りをしなくてはいけなくなってしまったと思います。どの子も、親をだまそうと思ってウソをついているのではなく、嫌われたくないという思いでいます。親が仕事に忙しいといって子どもに関心を示さないと、わざと問題を引き起こすことがあります。あるいは、ちょっとした出来事をオーバーに語り自分を悲劇の主人公にして親の関心を引こうとすることがあることを伝えました。
そのお母さんに、今回のことで何か気がついたことはありますか、とお尋ねしました。すると、子どものウソで悩んでいたけれど、自分も同じだった。自分の子どもだけの情報では、本当のところはわからないので、冷静になる。お金の管理をしっかりとする。とのことでした。私は、冷静に自分を振り返ることができるそのお母さんが、素晴らしいと思いました。
世の中のトラブルの多くは、お金の貸し借りなど金にまつわることです。子どもは、お金の大切さを知りません。お正月は、お年玉で高額なお金を手にする子どもたちも多いことでしょう。お金の使い方を家族で話し合うことをお勧めします。