中部中日記

9月4日(土)NIE新聞活用 読売こども俳句(校長先生より)

公開日
2021/09/04
更新日
2021/09/04

校長室

 平安時代に、中国から伝わった詩の影響で、秋はもの悲しい季節とされました。それは現代の人の感覚にも残っていますね。でも、よく考えてみると「食欲の秋」といわれる通り、山や海にめぐみがあふれる、心ときめく季節でもあります。俳句は、自由な詩型(しけい)。ウキウキする秋も詠(うた)いたいものですね。

2021年8月18日(水)読売新聞朝刊の「こども俳句」を紹介します。

とかげの目 それは雨より きれいな目
(小学校6年生の作品)
※「雨よりきれい」は、トカゲのひとみの、暗いかがやきを言い当てていますね。美しい詩の一節のような句です。「それは」という物語によく使われる言葉がうまく生かされています。とっておきの秘密を作者から教えてもらったみたい。

筋肉痛 猛暑とともに 夏が来る
(小学校6年生の作品)
※初夏からいきなり猛暑とは、びっくりしますね。地球温暖化の危機が叫ばれている今、身に沁みる句です。「筋肉痛」と並べているところにユーモアがあります。前途多難な夏になりそう。がんばろう!

大会で 雨がポツポツ 虹きらり 
(小学校5年生の作品)
※学校で大きな行事があったのでしょう。「大会」という言葉で、たくさんの子どもたちがイメージされ、その上に虹がかかるというのが壮大です。みんなが精いっぱい取り組んで、行事が成功したことを、お祝いするような虹ですね。

パンを焼く 鳥がいっぱい 春の朝
(小学校3年生の作品)
※まるで、パンの匂いにつられて鳥たちが集まってきたような表現が、すてきです。「春の朝」って、明るい日差しに、何もかもが輝いて見えますよね。何気ない生活のひとこまを通して、「春の朝」の季語といきいきと表現しました。

さくらもち 葉っぱをつけたら いいにおい
(小学校4生の作品)
※作者は、実際にさくらもちを作ってみたのかな。葉っぱをくるりとまいたら、ふっとサクラの匂いがしたのです。かすかな感覚を、逃さずにとらえたのは、お見事!見た目に加えて、においもさくらもちの良さなのだと、気づかせてくれます。

だれのかな 紙ひこうきに 海の色
(小学校5年生の作品)
※季語は入っていませんが、ゆたかな詩情を感じた句でした。ぽつんと落ちていた紙飛行機。いったいだれの?手がかりは、青い色をしているということ。誰かが海に行きたいという思いをのせてとばしたのかな。この詩的感性、非凡です。

【言葉のテクニック】 五七五 ひしめく言葉 響き合い

教室でともに学び、遊ぶ友だちとは、お互いに影響を与え合うもの。俳句の言葉もまた、同じです。五七五の決まった音数を教室にたとえれば、言葉はその中におさまった子どもたち。言葉と言葉は、密な状態で影響を与え合います。

天の川 水車は水をあげて こぼす (川崎 展宏(てんこう))

秋の季語である「天の川」の下で、水車が休みなく動いています。この「水」は普通の川の水という意味ですが、「天の川」が「水」という言葉に影響を与えて、まるで「天の川」から流れてきた水を水車がくみ上げているようにも思えてくるのです。星くずのように美しく輝く水しぶきが、見えてきませんか。
辞書にある意味にとらわれず、自分で言葉の意味を作り出せることが、詩歌(しいか)の面白さといえるでしょう。

(読売新聞2021年8月18日朝刊より)

中中生のみなさんも、何か秋の季語を入れて俳句を詠んでみてはどうでしょうか。