中部中日記

6月20日(日)NIE新聞活用 読売こども俳句(校長先生より)

公開日
2021/06/20
更新日
2021/06/20

校長室

 「はやぶさ2」が小惑星から少しだけ持って帰った砂から、生命の秘密が解き明かされるといいますが、俳句もそれに似ていて、たった十七音の短さですが、それをつくった人の性格や暮らしぶりが、ぱっと見えてくることがあります。少ないことや小さいことは必ずしもデメリットというわけではないのです。

2021年6月16日(水)読売新聞朝刊の「こども俳句」を紹介します。

水まきの 手伝いの中 水遊び
(小学校5年生の作品)
※水にさわっていると、つい遊びたくなりますよね。「水まき」をしているのはおうちの人、「水遊び」をしているのは子ども。一句の中で、主語が切りかわっているのに、気がつかないほど自然につくられています。言葉のマジックにしてやられました。

えんぴつを 耳にはさんで メダカ見る
(小学校3年生の作品)
※観察日記をつけているのでしょう。えんぴつを耳にはさんでいるという細かな描写が効果的、興味津々でメダカをのぞき込んでいるところが目に浮かびます。対象を短い言葉で、しっかりと描くのが俳句の基本。そのお手本のようです。

春のあさ きれいなはっぱ よくみたい
(小学校3年生の作品)
※春は、さまざまな花の咲く季節ですが、この句ではあえて「はっぱ」に着目していますね。春は、花だけではなく、葉っぱもみずみずしい季節だと知っていることが「俳句の才能あり」です。「よくみたい」という積極性もいいですね。

ヒヤシンス ミツバチさそって フラダンス
(小学校6年生の作品)
※ヒヤシンスがミッツバチと踊っているところ、想像するとうきうきしてきます。色彩が豊かなのですよね。ヒヤシンスの水色と、ミツバチの黄色とが、目を楽しませてくれます。
春の窓辺のファンタジーに魅了されました。

さくらの木 あざやかな色 中トロだ
(小学校5生の作品)
※さくらの色を見て、中トロの色を思い出したのですね。納得する人もいれば、びっくりする人もいるでしょう。「自分はこう思う」ということを、思い切って言ってみること、大切です。私はこの句におおいに納得、中トロが食べたくなりました。

水の中 みんなを送る にじのかげ
(小学校4年生の作品)
※空のにじではなく、水にうつっているにじを詠んだのが、他の人とは違う切り口で、「おやっ」と思わせます。「みんなを送る」は子どもたちを見送っているのかな。なんだかにじが、さびしそう。夢の中のような、不思議で美しい光景です。

【名句に学ぼう】 映画の「モンタージュ」応用

みなさん、映画は好きですか?実は俳句と映画はかかわりが深いのです。俳人が映画監督から影響を受けたり、逆に映画を作る際に俳句の方法が取り入れられたりすることもあります。
山口誓子(せいし)という俳人は、視点の異なるコマをつなげる「モンタージュ」という映画の方法を、俳句に応用しようと考えました。
夏草に 機関車の車輪 来て止まる   山口誓子
まずカメラが夏草を映(うつ)し、そのあと、機関車が駅に入ってくる映像に切り替わります。続いて、線路わきの夏草が、接近する車輪の起こす風にゆらぐさまもみえてきます。まるで映画のように、イメージが頭の中で動きませんか。
 芸術ジャンルは影響を与え合います。食わず嫌いせず、さまざまなジャンルに触れてくださいね。

(読売新聞2021年6月16日朝刊より)

3年生のみなさんは、ちょうど国語で俳句を勉強したところですね。「季語」を入れ、「や」「かな」「けり」などの「切れ字」も使って俳句を詠んでみてはどうでしょか。