5月23日(日)NIE新聞活用 読売新聞 こども俳句(校長先生より)
- 公開日
- 2021/05/23
- 更新日
- 2021/05/23
校長室
俳句はあいさつの心を持って詠むものと言われます。めぐりくる季節を「こんにちは!」と迎える気持ちが大切であると言うことですね。吹く風や流れる雲、草木や動物たちの命が、キラキラと輝いてみえる句を詠みたいですね。ケムシやナメクジなど、正直あいさつしたくない生き物もいますが、みんなこの星のなかまですから。
2021年5月19日(水)読売新聞朝刊の「こども俳句」を紹介します。
たんぽぽと 顔を上げると 青い空
(小学校6年生の作品)
※「たんぽぽと」の「と」がとっても良いなあ。日ざしをいっぱい浴びようと、上を向いて咲くたんぽぽ。その花といっしょに、自分も顔を上げてみたというのです。ちょっと落ち込んだときに、この句を口ずさんでみると、元気が出てきそう。
春風が おれの校ぼう ねらってる
(小学校4年生の作品)
※校ぼう(学校のぼうし)を吹き飛ばそうとする「春風」。風をいたずらぼうずみたいに表現したのが痛快です。ぼくやわたしではなく「おれ」といったのも力強い調子を出しています。うばわれないよう、しっかりと手で押さえているさまが目に浮かぶようです。
花ごろも 一年一度の 晴れ姿
(小学校5年生の作品)
※「花ごろも」は、花見にいくときの特別な装い(よそおい)のこと。桜が咲くのは一年に一度ですから、「花ごろも」は一度だけの晴れ姿というわけ。「晴れすがた」には「晴れ」の語が入っているので、きっと青空の下での花見だったのだろうと思わせます。
目がさめた ソメイヨシノが なくなった
(小学校4年生の作品)
※あんなに咲き満ちていたソメイヨシノが、起きると、あとかたもなくなっていたというのです。強い風が吹き続けると、一晩で散ってしまうこともありますよね。ソメイヨシノのまるで夢のようにはかない命を、見事にすくいとっています。
さくらもち 優しい色で つつまれる
(小学校4生の作品)
※あんこを包むもちも、桜の葉も、ともに「優しい色」をしていますね。「優しい色でつつまれる。」というフレーズ、なんだか見ていると、心がほっとなごみます。自分も包まれたいような・・・・。素敵なフレーズをありがとう。
菜の花を 勉強机に いけてみた
(小学校4年生の作品)
※「いけてみた」でとどめて、その後の気持ちを略しているのが、この句のうまさ。言っていなくても、菜の花のおかげで机のあたりがはなやいで、勉強もはかどったにちがいないと想像できます。季節の力をぞんぶんに活用した一句です。
【よい句ってどんな句?】日常の言葉 別の言い方で
「本」と「書物」は同じ意味だけれど、「書物」は、ちょっと硬い感じ。言葉の印象の違いに敏感になるのが詩人への第一歩です。
しづかさや 湖水の底(そこ)の 雲の峰(みね) 小林一茶
「雲の峰」、つまり入道雲が湖面に映っています。まるで水底に沈んでいるように動かない様子だということで、静かさが伝わります。この句
しづかさや 湖水にうつる 雲の峰(みね) 霞東
という句がすでに作られていて、それをまねしただけともいわれています。でも、「うつる」という言葉をあえて使わないで、雲が水に映っているのを表現したのが一茶のすごいところ。
たとえば、風が吹くとか靴をはくとか、当たり前に使っている言葉を、別の言い方にかえてみましょう。言葉のセンスが磨かれますよ。
(読売新聞2021年5月19日朝刊より)
中中生のみなさん。日頃当たり前に使っている言葉を、別の言い方にかえて、俳句を詠んでみてはどうでしょか。