1月30日(金) 「ヒーロー」【少年の主張愛知県大会より】
- 公開日
- 2026/01/30
- 更新日
- 2026/01/30
人権教育といじめ対策
中学校に愛知県青少年育成県民会議さんより「夢と希望と」をテーマにした「令和7年度少年の主張愛知県大会」の発表文集が届きましたので、HP記事で少しずつ紹介します。中中生のみなさんと同じ世代の子たちが今伝えたいことをぜひ読んで、感じたことを友だちや家族に話してみましょう!今回紹介するのは、西尾市立鶴代中学校3年の生徒の作品です。
題「ヒーロー」
中学校に入学すると、「将来、なりたい姿は何ですか」と聞かれることが多くなった。そのたびに、僕は「優しい人」と答え、本当の気持ちを封印するようになった。
僕が本当になりたい姿、それはヒーローだ。幼い頃、ヒーローが悪と戦い、世界を救うかっこよさにあこがれた。その夢は年とともに変化しながら、僕の中に存在し続けた。
僕は今まで中国、タイ、フィリピン、インドに訪れたことがある。特に、小学六年の一年間を過ごしたインドでは衝撃を受けた。僕が過ごしていた都会から、さほど遠くない場所にストリートチルドレンやブルーシートの家で暮らす人々がいたのだ。日本や他の国では感じることのなかった貧困を肌で感じ、夢は弱い人たちや困っている人たちを助ける人になりたいという強い思いへと成長していた。
それなのに、中学生になると、「ヒーローになりたい」と言うと、子供みたいと笑われて恥ずかしいから、「優しい人」と無難な言い方をした。本当は、夢の大きさに向き合いきれず、自分から無理だと逃げていたのだ。
ところが、中学三年生の四月、そんな僕の心を揺さぶる出来事があった。塾の帰り道、いつも通り自転車をこいでいたときだった。ガンという衝撃と同時にアスファルトに顔から突っ込んだ。急な出来事で自分に何が起きたのか分からなった。頭や手のヒリヒリとした感覚。口に広がる鉄のような血の味。ようやく前輪が石に乗り上げて転んだのだと理解した。歯は折れて、変な方向に傾いていた。自転車は車輪が大きく曲がって動かず、持ち上げたくても力が入らない。どうしたらいいのかと、僕は途方に暮れた。そのとき、
「大丈夫?」
二人のお兄さんが声をかけてくれた。一人は金髪で黄色の眼鏡、もう一人はタバコを吸っていた。近づいてきた二人が、僕はただただ怖かった。二人の外見が「悪い人」をイメージさせたからだ。このまま絡まれてしまうのかと、ドキドキして冷や汗が出てきた。
でも、その不安な気持ちはすぐに消えた。二人は僕の話を聞いて、すぐに自転車を移動し、スマホを貸してくれて、親に連絡をさせてくれた。貧血で倒れそうになった僕を近くのベンチまで運び、ずっと付き添ってくれた。
「こんな遅くまで勉強してすごいじゃん。俺らそんな頭良くねえから。本当、尊敬だわ。」
緊張がほぐれるように明るい口調で話をしてくれ、勉強や将来の話になったときは、
「今の自分では志望校に合格できないかも。」
と、僕が自信なく言うと、彼らは、
「君ならできるよ。塾行ってがんばってるじゃん。応援するよ。」
と、言ってくれた。その後、親が来てくれたので彼らにお礼を言って、そのまま別れた。
今、思い出しても、彼らは間違いなく本物のヒーローだった。困っている僕を見て見ぬふりすることなく助けてくれた。痛む身体だけでなく、進路に悩む気持ちにも寄り添い、優しく励ましてくれた。僕を救い、勇気づけるだけでなく、人を見た目だけで判断してはいけないことにも気づかせてくれた。
二人への感謝の気持ちとともに、僕もヒーローになりたいという夢がよみがえってきた。誰が困っていても、ためらいなく動ける優しさや強さ、その場でできる精いっぱいの行動をする誠実なヒーローに。
また、そのとき、僕は二人から受け取った思いを次の誰かにつなげていきたいとも考えた。すると、僕だけがヒーローでなくてもいいということに気づいた。僕と同じように、その人が誰かにもらった優しさや励ましを次の誰かに贈ることができたら、その人は誰かにとってのヒーローになれる。それは連鎖となって、次へ次へとつながっていくはず。そうやって、誰もがヒーローになれば、優しさがあふれる温かい世界が作っていけると思う。
今、ヒーローになりたい僕にできることは「国連で働く」という夢に本気で挑戦することだ。インドでの生活で目の当たりにした、幼い子が自分のおかれた現状も理解しないままに当たり前のように働いたり、物乞いをしたりすることのない世の中にしたい。生まれた時から人生が決まることのない、格差のない平等な社会にしたい。二人のお兄さんの応援に応え、自分なりにありがとうと伝えるためにも、僕は彼らを超えるヒーローになる。
(HP掲載について、編集・発行先より許可をいただいています)