学校日記

3月19日(木)赤見小学校第79回卒業式(校長室より)

公開日
2026/03/19
更新日
2026/03/19

校長室より

本日、赤見小学校第79回卒業式を挙行しました。卒業証書授与のあと、校長から式辞を述べました。真剣なまなざしを向けながら、校長からの最後の話を聞く6年生の態度がとても立派でした。来賓の皆様方からは、「とても良い式でした」とお褒めの言葉をいただきました。本日卒業した55名の児童の皆さん、ご卒業おめでとうございます。赤見小学校での成長と思い出を胸にこれからも活躍をしてください。  以下は、本日の校長式辞の概要です。

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「赤見の森」の桜の木に淡いピンクの蕾が膨らみはじめ、校庭は日増しに春色へと変化しています。本日、この佳き日に、ご来賓の皆様のご臨席を賜り、第七十九回卒業式を挙行できますことに心より感謝し、お礼申し上げます。また、お子様の健やかな成長を願い、温かく育まれました保護者の皆様方、お子様のご卒業誠におめでとうございます。本校を巣立つ五十五名の皆さん、卒業おめでとうございます。皆さんに先ほどお渡しした卒業証書には、皆さんのこの六年間の努力と成長、そして仲間と過ごしたかけがえのない時間が刻まれています。皆さんの小学校生活を振り返る時、どうしても忘れられないことがあります。それは、新型コロナウイルス感染症の流行により、学校生活の中でもいろんな活動が制限されたということでした。全員がマスクをつけて臨んだ入学式を覚えている人もいるでしょう。パーティションを付けた机での学習も経験し、グループで給食を食べる楽しさも知らないまま数年間を過ごしました。元気よく声を出したり、近づいて話したりすることさえ十分にできない時もありました。そんな中、「語彙力を高め、『言葉の力』を身につける」ために学校で取り組み始めたこと、それが中部大学の深谷圭助教授のご指導のもと、皆さんが、3年生の時から4年間、全校を挙げて取り組んできた「辞書引き学習」です。

皆さん、覚えていますか。初めて辞書を手にした時の、あのずっしりとした重みを。初めて辞書引き学習のやり方を教わった日のことを。他の学年と一緒に、体育館に集まって一斉にスタートしました。最初は「難しそうだな」と思っていた人もいたかもしれません。しかし、いざやり始めると、宝探しのように新しい言葉を見つけるのが楽しくて、夢中で付箋を貼っている子が大勢いました。教室に戻っても、ひたすら辞書に向き合っていた皆さんの姿を、新しい言葉を見つけるたびに色とりどりの付箋を貼り、辞書がどんどん膨らんでいったあの光景を、今でも鮮明に覚えています。 あの付箋の一枚一枚は、皆さんが持っていた「言葉への興味」の証であり、自分を磨き続けた「努力の結晶」でもあります。

ここで、ある小説の一節を紹介します。三浦しをんさんの『舟を編む』という物語です。膨大な時間をかけて新しい辞書を作る人々の情熱を描いたこの作品の中で、辞書監修者の松本先生という人物は、言葉の大切さをこのように語っています。

「私たちは、言葉という舟に乗って、暗い海を渡っていく。誰かに自分の思いを伝えたい、誰かの気持ちを知りたい。そう願うからこそ、私たちは言葉を紡ぎ、舟を編むのです。」

皆さんが4年間、付箋を貼り続け、くたくたになるまで使い込んできたあの辞書。それは単なる本ではありません。皆さんがこれから広大な人生の海へ漕ぎ出すための「舟」を、自分自身で一生懸命に編み上げてきた時間そのものなのです。

人が言葉に強い興味を持ち、言葉を大切にする理由、それは、言葉が「自分の思いを伝えるコミュニケーションの道具」であると同時に、「学問を深め、思いや考えを形作る土台」だからです。言葉を知れば知るほど、皆さんの世界は広がります。今日、皆さんに改めてその意味をかみしめてほしい3つの言葉があります。

•「愛情」:相手をいとおしく思い、相手からもそのように思われたいと願う気持ち。 

•「友情」:友達として、相手のために尽くそうとするまごころ。 

•「感謝」:ありがたいと思うこと、ありがたいと思って礼を言うこと。

辞書に載っている意味は一つかもしれません。しかし、皆さんは、多くの仲間や先生、地域の方々、そして家族と触れ合う中で、これらの言葉に「自分なりの色」(自分の経験をもとにした解釈や考え)を塗ってきた(付け加えてきた)はずです。「言葉の力」があるからこそ、自分の思いを適切な言葉で伝え、相手の言葉の裏にある「思い」を想像し、時には他人の痛みに寄り添い、自分の人生をより豊かに、より良くしていくことができるのです。

今日、この会場には皆さんの門出を祝うために、多くの方々が駆けつけてくださいました。とりわけ、今日まで一番近くで皆さんを支え、慈しんできたご家族の存在を忘れてはいけません。皆さんはこれまでに身につけてきた、多くの語彙を、「言葉の力」を、まずは今日、身近な人々への感謝を伝えるために使ってください。心を込めた言葉は、大切な人の心を温め、感動させることができます。 照れくさいかもしれませんが、「ありがとう」という言葉に、皆さんが学んだ語彙を付け加えて、自分だけの思いを乗せて伝えてください。言葉を尽くすことは、自分の思いを正確に伝えるだけでなく、「相手を尊重する」ということでもあるのです。

皆さんは明日から、新しいステージへと踏み出します。中学校では、さらに専門的な学びが待っています。わからない言葉に出会ったとき、それは皆さんの知識が、世界がさらに広がるチャンスです。面倒がらずに言葉の意味を確かめ、わかったことを自分の考えとして整理する習慣を忘れずに、言葉の海へと漕ぎ出して行きましょう。そして、言葉を「知識」としてだけでなく「心」を動かすためにも使いましょう。自ら学び、言葉を高め続ける努力を怠らない人であってほしいと願っています。

最後になりますが、皆さんがこの学校で造り上げた「言葉」という舟が、これからの中学校生活、そしてその先の長い人生において、荒波を乗り越える確かな力となることを信じています。皆さんの前途に、幸多からんことを祈念し、式辞といたします。

    令和8年3月19日  赤見小学校長