6月11日 学校集会
- 公開日
- 2013/06/11
- 更新日
- 2013/06/11
こころを育てる
一昨日の陸上大会の表彰、各委員会からの連絡などが行われました。校長先生のお話を載せます。
「そんなもん作たってダメや!」
神奈川県で行われたジュニアオリンピックでのこと…砲丸投げの決勝前夜のことです。
3年生の選手のために、1年生が一生懸命テルテル坊主を作りました。砲丸投げの場合、雨が降ると寒くなり、指がかじかんで砲丸がうまく握れない。するといつもの調子が出せずに結果がでない 。ということが起きるからです。
1年生は3年生のためを思って、雨が降らないようにと願いを込めてテルテル坊主を作っていたのです。テルテル坊主で雨が降らなくなるとは、彼らも本気で考えてはいません。しかし、少しでも3年生の不安がなくなれば、と思い、気持ちを込めて作ったのです。
一見するととても素晴らしいステキな話に聞こえます。しかし監督の原田先生はその生徒たちにこう言いました。「ええか。このテルテル坊主の気持ちは嬉しい。嬉しいけど、テルテル坊主200個作ったかって、天気は変えられへん。そんなもん、なんぼやったかてダメや。結果と関係ない!」
なぜ原田先生はそう言ったのでしょうか。
原田先生は、不安を除去する最高の方法は「準備」だと言います。つまり、これは危機管理の鉄則です。つまり「最低最悪の状態を想定し、最高の準備で臨み、楽観的に対応する」ということを伝えたかったのです。先生はこれを部員に徹底させました。天気予報でも晴れマーク。 絶対に雨は降らないということがわかっても、選手は、明日が本番となると、どうしても緊張して、不安になってしまいます。ところが、当日、その選手は生き生きとした目をしていました。では不安にならなかったのか?いいえ不安で、不安でしょうがなかったのです。
彼はかつて日本一になった先輩に電話で相談したそうです。するとその先輩は、「それはオマエ、準備不足や」と一喝されたそうです。そこで、誰もが晴れると言うなかで、雨が降った時の「準備」を徹底的にしたのです。傘、かっぱ、替えの下着、使い捨てカイロなどでその選手のカバンは大きく膨らんでいました。
本人が言うには、最初は不安でしかたなかったが、コンビニで買物をしてカバンに詰めているうちに、不安は消えていき、不安が自信に変わっていったとのこと。
ほとんどの人は不安を感じた時、何をするかというと、何もしない。あるいは友達に相談して、慰め合うとか、ただ「絶対できる!」と言い聞かせるだけになります。しかし、このどれもこれもが、現実的な対応とは言えません。
簡単に言うと物理的な現実世界に変化がないのだから、心の状態もなかなか変化しない。そうして、自分は不安じゃないと自分に嘘をついて、本番に臨む。結果はでなくて当然です。
この話から分かるように、不安や心配を取り除く、最も現実的な方法は「準備」や練習である。準備や練習をきっちりやっていれば、プラス思考とかマイナス思考に関係なく、またネガティブとかポジティブとかでなく、不安はなくなっていきます。
この原田隆史先生。大阪の中学校に赴任して、そこで陸上部の顧問になり、特に優れた運動能力のない、ふつうの生徒たちを、各大会で13回も日本一に育てたという、すばらしい指導者です。ちなみにこの原田先生が教えた中学は、不要物どころかナイフを持ち歩く生徒がいるようなとんでもない環境でした。そんな学校から、なんと13年連続、日本一という偉業を達成し、学校を変えていきました。(大阪の人ならこの環境をよく知ってるので、詳しく知れば知るほど、信じられない気持ちになるそうです)
「そんなもん作たってダメや!」
そんなことやっても変わらないことを、わたしたちもどれだけやっているだろうか?と考えます。不安をなくすのに必要なのは、ただひとつ、現実を変えることです。
皆さんは、今の自分を変えようと努力していますか?苦手な運動、嫌いな教科、わからない問題、見えない進路、さらには、うまくいかない友達関係を前にして、どのように現実を変えようと努力していますか。ただ経っていても、待っていても何も変わりません。今回の陸上の男女総合2位の成果の裏に、準備と練習があったことを忘れないでください。
そして、皆さんなら「現実を変える」ことができるはずです。y