学校日記

5月25日 6年 始まる

公開日
2020/05/25
更新日
2020/05/25

6年生

人と関わること。

今日は、タジキスタンとアフガニスタンの国境沿いの旅。

アフガニスタン。
2001年9月11日のアメリカ同時多発テロ事件が起きたのは、僕が高校1年のとき。
テレビの映像を、現実世界で起きていることに頭の中で変換することができなかった。
ただ、心がぐっと締め付けられる感覚におちいったのを覚えている。
その後、アルカイダの引き渡しをこばんだタリバン政権は、アメリカ合衆国主導による攻撃を受け、崩壊した。

その頃から、
各種報道で流れる”アフガニスタン”という言葉が、恐怖の感覚として僕の頭の中に書き込まれ、その中に生きる人の生活を想像しても、それができないでいた。


それから時が経ち、2015年6月。

僕の前に、一筋の川が流れる。

向こうに見える川の対岸は、あの“アフガニスタン”だ。

僕の瞳には、書き込まれた恐怖の世界が映る。
こんなところまで来てしまったと、
息をのみ、鼓動を感じた。


ただ、
この後の人との出会いが、映す世界に温もりを与えた。

向こう岸に、僕と同じ年頃の男性が立つ。
この地独特の彫り深い顔をした男がこちらに気づいて、
悪い子どものような笑いを見せて大きく手を振ってくる。

少し緊張したが、
僕は、負けじと全身を使って応えた。


男はさらに続ける。

こっちに来い、
アフガニスタンに来い、
俺たちの国に来い、

と両手で招きながら、満面の笑みを浮かべるのが分かった。


僕もまた、全力で笑って応えた。

無理だ。なぜならそっちはアフガンだ。

声が聞こえる程の距離ではなかったけれど、僕の応えを聞いて、彼はまた大きく笑った。


最後に、
いつかまた会えるかのように、大きく手を振り合って別れた。


彼とのやりとりで、少しだけ、
恐怖として書き込まれた僕にとっての“アフガニスタン”に、温かい色がついた。


人と関わること。
それは、世界を広げ、人生に色をつける。



君たち。いよいよだ。

学校が始まる。


人と関わることが,どれほど素敵なことなのか、
すでに感じているだろうか。

朝、学校にきて、
仲間に「おはよう」と言えること。

人に助けられて、
「ありがとう」と言えること。

ときに、
くだらない喧嘩をすることもあるだろう。
失敗することもあるだろう。


こんな当たり前だった瞬間が、今の君たちには、輝いて見えるか。

僕には、きらきらと光って見える。


今まで気にもしなかったことが、
きっとこれから、かけがえのない瞬間に感じられるだろう。
感じてやろう。

それがきっと、コロナ休校がもたらした、
数少ない前向きに捉えられる意味なのだと思う。

命あることに感謝して、
たくさん人と関わって、
みんなで温かい日々をつくっていこう。

明日から分散登校が始まる。
君たちに会えることを、心から楽しみにしている。