3月3日(木)第75回卒業式
- 公開日
- 2022/03/03
- 更新日
- 2022/03/03
学校行事
式 辞
卒業生の皆さん、ご卒業おめでとうございます。
(中略)
介護施設で高齢者の介護をしている介護士の教え子がいます。彼女は、今はもうベテランの介護士さんで、経験の浅い介護士さんの指導も担当しています。
彼女は、中学三年の時、困っている人の役に立ちたいという想いから、福祉のことを学ぶ進路を選択しました。そして念願かなって、介護施設で働き始めました。
しかし、仕事を始めたときは、適切な介護ができず、利用者の方から厳しい言葉を投げかけられることが度々で、つらい日々を送っていたそうです。心が折れることが何度もあったそうです。周りの方々からの助けがないとうまく介護できないこともあって、「ごめんなさい」という言葉ばかりが口から出ている日々が続いていたそうです。
そんな彼女を見かねた先輩の介護士さんから、「ごめんなさいという言葉は私にはいらないから。同じ職場で働いている仲間だから助けあうのは当たり前。助けてもらったら、なんて言う?」と言われたそうです。「ありがとうございます」と答えると「そうだよね。ありがとうって言ってもらえると、私も気分がいいからさ」とにっこり微笑んでもらったそうです。
その先輩とのやり取りがあってから、彼女は、「ありがとう」という言葉を同じ職場で働く方々だけでなく、施設を利用している方々にも意識して使うようにしたそうです。
しばらくして、厳しい言葉をかけられた利用者の方から「最近、あんた、変わったね。あんたから元気をもらってるわ。ありがとう」といわれたそうです。
彼女はうれしくって「ありがとうございます」と何度も口にしたそうです。
覚えていてくれる人もいるかもしれませんが、三年前、皆さんが萩原中学校に入学した際に、中学校生活を、明るく、楽しいものにするために「ありがとう」という言葉を、たくさん使ってみてくださいという話をしました。
この入学式での話は、彼女から聞いたこの出来事がきっかけでした。
「ありがとう」は、有り難しという言葉から来ています。有り難し、有ることが難しい、そこから、めったにない、珍しく貴重であるということから感謝するという意味になり、「ありがとう」という言葉が使われるようになりました。
「ありがとう」という言葉は、人と人との思いをつなぐ素敵な言葉だと思います。距離がある人であっても、「ありがとう」という感謝の気持ちによって、その人との距離が縮まり、新たな人とのつながりが生まれてきます。
皆さんが進む新しいステージでは新たな出会いが待っています。その出会いは、皆さんにとって、自分を高めていくチャンスになります。皆さんが出会う方々への感謝の気持ちを大切にし、心と体を鍛え、心豊かに大きく成長できるよう願っています。
皆さんの笑顔、温かい心、熱い思いを後輩たちにしっかりと伝えていきます。本当にありがとう。
卒業生の皆さんの未来に、幸多かれと祈っています。
令和4年3月3日
一宮市立萩原中学校長 成瀬 光彦