学校日記

3月7日(火)卒業式 式辞より

公開日
2023/03/08
更新日
2023/03/08

校長室より

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 252名の卒業生のみなさん、卒業おめでとうございます。
みなさんにとっての北部中学校での生活はどうでしたか。暗く辛いコロナ禍の3年間ということはなく、「コロナだからどうした」と言わんばかりに、明るく、元気に、そして、へこたれないみなさんでした。
今、みなさんの卒業に合わせるように、コロナによる特別な生活が終わろうとしています。しかし、たとえコロナが過去のものになったとしても、私たちは忘れてはいけないことがあります。それは、未知のウィルスに、薬もワクチンもなかった状況で、コロナ診療のために戦い続けてくれた医療に携わる人たちがいたということです。
 そのコロナ診療の最前線に立った医師が自らの経験をもとに綴った「レッドゾーン」という小説があります。この話は、正体不明のウィルスにおびえていたコロナ第一波の話です。
2020年2月、みなさんが中学校に入学する直前、横浜港に着岸したクルーズ船の感染者を全国の病院で支援することになりました。そして、長野県の片田舎、ある病院が感染者の受け入れを決めたことから物語が始まります。この地域で受け入れたのはこの病院ただ一つ。治療する方法がわからない、自分がコロナに感染するかもしれない。そして、自分の家族を巻き込む恐れがある。医師や看護師は不安と混乱の中、患者の対応にあたります。そして第一波の真っただ中、近隣の病院からの協力が得られないまま、さらに多くのコロナ患者がこの病院に集まります。
 疲れ切った医療チームから「なぜ、うちの病院だけがコロナ診療を続けなければいけないのか」「我々が命をはって前に進もうとするのはおかしい」という声が上がりました。その時の内科部長の答えは「病気で苦しんでいる人がいるのなら。それがコロナであろうと我々は断るべきではない」というものでした。更に、他の医師が「これは医師のつとめではなく、人間としてのつとめだと思う。治療法のない感染症が相手となれば医学は役に立たない、今この感染症と戦う唯一の方法は誠実さではないか」とコロナ診療を続ける意味を語りました。
 人は生きていれば、様々な困難に出会います。みなさんもこの3年間で多くのことを経験したことと思います。時には、学校という集団から離れて一人になりたいと悩んだことがあったかもしれません。学校生活を送りたくても送れない悔しさを味わったかもしれません。様々な苦しみや困難に出会っても、みなさんは自分をあきらめることなく、今日まで誠実に歩いてきました。
 観る人がスタンディングオベーションしてくれる感動の演技をしようと取り組んだ体育祭の創作ダンス。最初は順調ではなく、思い通りにいかないこともあったと思います。それでも観てくれる人のために仲間と努力を重ねてきたからこそ、北中のグランドに大きな感動が広がったのだと思います。
このダンスでみなさんが踊った曲「僕のこと」。その歌詞の中にこんな言葉があります。
『努力も孤独も報われないことがある。それでも今日まで歩いてきた日々を、人は軌跡と呼ぶ』
 つらく苦しいときこの歌を、この言葉を思い出してください。そして、苦しいときの誠実な一歩が、自分の尊い軌跡、足跡となることを忘れないでほしいと思います。