3/19 第77回卒業式〜式辞
- 公開日
- 2024/03/19
- 更新日
- 2024/03/19
校長室
(前半省略)
昨年十一月十一日に史上初の八冠制覇を成し遂げ、「歴代最強」と評されたのは、藤井聡太棋士です。史上最年少の十四歳二か月でプロ入りし、デビューから歴代一位の二十九連勝を果たしました。その後も最年少での優勝やタイトル獲得・防衛など、将棋界の歴史を次々と塗り替え続け、類まれな強さを広く印象付け、今なお成長し続けています。
プロに入る前、将棋教室へ通う頃は、年上の棋士たちに果敢に挑み、対局に負けるたびに、がっくり肩を落とし、悔しそうな様子を見せ、相手が誰であろうと涙する。負けて当然という強い相手でも、本人は納得がいかない様子で考え込む。そんな負けず嫌いの姿勢が、ここまで強くしたのかもしれません。
藤井棋士は八冠達成後に、「本当に苦しい戦いだった。この経験を糧にして、もっと実力をつけていかないといけない。八冠については、見合った実力があるかと言われればまだまだです。」と話し、日本中が偉業達成に沸き立っても、本人の謙虚さと向上心はまるで変わりませんでした。
若干二十一歳の若き天才棋士は、まだ誰も踏み込んだことのない道を切り開き、これからも将棋界に新たな歴史を刻んでいくことでしょう。しかし、八冠の防衛戦も含め、連勝という自分の記録も自分で塗り替えていかなければならないなど、その道はこれまで以上に、より険しいものになっていきます。
その中で藤井棋士は、結果に見合うだけの実力が求められるという今の自分の状況を振り返り、「どうすればさらに実力を高められるかを考えて、意識的に取り組まないと力を伸ばすのは難しい。」とチャレンジャー精神を持ち続ける決意を示すとともに、「負けた時に、どう気分をよくするかは意識するが、勝った時も負けた時も、変わらずモチベーションを保つのが大事。これまでの戦いをしっかり振り返って前に進んでいきたい。」と、力強く語っています。
皆さんが、これから夢を描いて歩んでいく道も、決して平たんな道ではなく、つらいことや苦しいこと、思い通りにならないことが多いかもしれません。それでも、藤井棋士のように、現状に満足することなく、一歩ずつ前へ前へと進み、さらなる高みを目指していってほしいと思います。自分の夢をかなえたいと思うなら、一度や二度の失敗で諦めずに、何度も挑戦することです。
藤井棋士が見せる、どんなに険しい道でも臆せず挑戦し、考え抜いた末に最後は必ずたどり着き、自分はどこまで行けるのかと先を見て、自分の信じる道を突き進んでいくたくましさを持ち続けていってください。
これから、答えが一つではない複雑な世の中を生きていく中で、たくさんの夢を思い描き、ときにはかなわない夢とも向き合いながら、充実した道をたくましく歩んでいってほしいと思います。そして、皆さんが、これまでこの西成小学校で培い、下級生や周りの様々な人たちに見せてきた、人を思いやる心も忘れないでください。皆さんが、「たくましさ」と「優しさ」を兼ね備えた魅力ある素敵な人へと、さらに成長していくことを願っています。
(中略)
それでは、卒業生六十四名の皆さん、感謝の心を大切に、「やれる 絶対やれる」の強い気持ちで本気を出し、自分をきたえてゆけば、夢は絶対つかめます。そのための第一歩を踏み出していってください。