6・4(金)達成感を大切に!【校長室より】
- 公開日
- 2021/06/04
- 更新日
- 2021/06/04
校長室
愛知県教育振興会発行「子とともに ゆう&ゆう6月号」に掲載されていたエッセイです。
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「小さな目標の達成は、心と体を前進させてくれる」
柔道家 谷本歩実
〜前文略〜
そんなわたしは、安城市にある小学校で6年間を過ごしました。ここで出会ったのが今回ご紹介する、陸上部顧問のI先生。ユーモアあふれる人柄で当時のわたしは、憧れと絶大な信頼を寄せていました。
幼少期から体を動かすことが大好きだったわたしは、小学3年生で走り幅跳びの楽しさに目覚めると、放課後に校庭の砂場で暗くなるまで夢中になって跳び続けていました。4年生になると、小学校のクラブ活動への参加が可能となり、念願の陸上部に入部することに。練習は1日2回、仲間の存在にも恵まれ、陸上にのめり込む日々を過ごし、5年生で出場した愛知大会では、走り幅跳びの部で優勝することもありました。
実は、そんなわたしにも逃げ出したくなるサバイバルレースのような練習メニューがありました。ぜん息もちで長距離が苦手なわたしにとって、とにかく自分との闘いの時間。「あと1周」「あと1回」「あと1歩」どれだけこの言葉を自分に言い聞かせ、ゴールまでつなげてきたか。そんな頑張りを報いるかのように、I先生はゴールした部員一人一人をいつも温かく迎え「よくがんばったな!」とねぎらうのです。これがまた不思議なことに、そのひと言に涙がこみ上げるんですよね。今思うとこれこそ達成感であり、自発的に頑張りたいと思える原動力だったのではないかと思います。
〜中略〜
今では、I先生と出会った当時のわたしと同じ年頃の子をもつ母となりました。子どもとともに未来を描きながら、がんばれ!と応援する一方で、ふと我に返ると「あまりにも遠いゴールでは、子どもの息がきれてしまう。日々達成感を感じながら、自発的に頑張れる子に育ってほしい」と感じるようになりました。それ以来、子どもにかける言葉が180度変わりました。
人生のめぐり合わせから得た大きな財産を、これからも受け継いでいきたいと思います。
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谷本歩実さんは、1981年の愛知県生まれ。2004アテネ五輪、2008北京五輪の女子柔道で金メダルを獲得した方です。現在は、2020東京五輪の組織委員会理事としてご活躍されています。
大きすぎる目標ではなく、小さい目標を一つずつ達成することを経験することで心も体も大きく成長することを自らの体験から述べられています。「スモールステップ」が大切といいますが、簡単にクリアできる目標では、成長につながりません。少しの困難、頑張れば越えられる困難を経験し、そのような経験が積み重なった時、心と体が大きく成長するのですね。